マン32
それでも全面戦争よりは犠牲は少ないだろう。
「どれだけの犠牲を出すつもりだ、アシュタル」
この方法ではどれだけの死者がでるか見当もつかない。
……最悪の場合、全滅……
「これしか方法がないのだから仕方あるまい。他に方法があるのか?」
羅刹は苦りきった表情で俯いた。
「……あたしが軍に投降したら……」
アシュタルは深い溜息を一つついたあとで、
「街の連中が納得すると思うのか?」
……出来る訳が無い。
文字通りの『命の恩人』である月夜を街の住人が引き渡す訳が無い。引き渡したとしても、人口調節の為に自分達も殺されるかもしれないのに。
「腹を決めろ。それしか方法はないのだからな」
アシュタルは夜空を見上げたままそう言った。
セインもその夜、手紙を受け取った。軍からだ。内容は、
「正面衝突あるのみ。万一実行不可能の状態に陥った場合は、周囲より呪力による援護射撃を行う」
…………
ものは言い様とよく言ったものだ……はっきり言って脅しだ。命令に従わないのなら自分達もろとも攻撃をする、と軍は言いたいのだ。
セインはその手紙をぐしゃりと握りつぶした。
その顔には言い表せぬ苦悩が滲んでいた。