器用な奴
一日一日を、精一杯生きていきたい。
生きている素晴らしさ、平穏のありがたさを噛み締めていたい。
「あっ!緋影っ!手前っ!何先輩とラブラブモードに突入してやがるっ!」
戻ってきた大竹はいきなり絡んできた。
「先輩。この馬鹿に何か言ってやってください」
こめかみを押さえながら溜息をつく。
「大竹君、私と深山君がラブラブだとなにか不都合でもあるんですか?」
が、彼女は平然とそんな事をのたまっている。
「い〜え〜、全〜然〜」
大竹は口笛をぴゅーぴゅー拭きながらごまかしている。
ただ、彼の表情は葵から見える左側面はなんてことのない表情だが、緋影から見える右側面は鬼のような形相になっている。
(……器用な奴だ)
かくし芸大会にでも出してやりたい位だ。
が、やはり大竹は良い奴だった。
自分と葵が付き合っているのは知っているのに、以前と変わらずこうして駄弁っている。正直自分には大竹ほどの器量は持ち合せていない。