浪漫を求めて

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ネロ

ネロ

セインはテントの中で十数名の部下達に次ぬすべき行動を命じていた。

「ラファエル、お前は中央皇都にこの状況を伝令せよ。村人の死体の埋葬を忘れるな。残りの者は村人に救援物資を。子どもに優先的に渡すことを忘れるな。わかったな?」

そう言うセインの声には隠しきれない疲労が滲んでいた。セインの部下達は踵を揃えて素早く敬礼をし、そして駆け足でテントを出て行く。だがその足取りもやはり重い。

大きな溜息をつくと同時に、セインは覚えのある気配を背後に感じた。

「ユートか……何の用だ?」

ユートはやつれきった表情で、

「セイン、食糧は……もう無いのかい?」

いつもより小さな声でそう言った。

「……たった今、皇都より救援物資が届いたが……焼け石に水だ……」

セインはそう言ってかぶりを振った。

長期に渡る旱魃で危機的な飢饉が発生した為に、この村にセイン達が派遣されてはや二ヶ月。だがその二ヶ月間でまともな救援物資が届けられたことはない。輸送されてきたものは僅かな水と、栄養価がほとんどない保存食のみ。この保存食すら全ての村人には行き渡らない有り様だ。

しかし、それは仕方のない事だった。皇都の周辺地域ですら餓死者がでる現在の状況では、こんな辺境の土地にはまともな救援物資が送られてくるはずもない。

最初の内は部下や自分の食糧の分を与えて乗り切っていたが……それも限界だ。二週間前から急激に餓死者が出始め、人口五百人はいたこの村が、今や半数以下にまで激減していた。日に少なくとも五人ずつは死んでいく。多い時には十人以上だ。

だが腑に落ちないことがいくつかある。一つは人口調節を進めている軍がなぜこんな辺境の村に救援隊を派遣したのか。残酷だが、村人を餓死させるのも人口調節の一つだ。セイン達、神官の血縁者の反対にも関わらずこれまで軍は、どんな飢餓に陥ろうとも辺境の村に救援隊を送った事は無い。もう一つはどうしてここまで飢饉が広がってしまったのか。噂によるとこの近辺はそのほとんどが飢えに苦しむ村だそうだ。旱魃があったとはいえ、保存食もあっただろうに、ここまで同時に飢餓が起こることが信じられない。

「……どうにか……どうにかならないのかっ?!」

ユートは机にその拳を振り下ろす。机はだんっ、という音をだしたのみで、何も答えはしない。