イジワル
「……はあ」
盛大に溜息を吐き出した。
真面目な彼女のことだからかなり説教されるのだろう。
「急げば人目につかない内に行けるので、ちょっと急ぎますね」
すでに葵は跳躍していた。
それはほとんど飛んでいる、と言っていいような跳躍。
(……これじゃ五分もしない内についてしまう)
葵のアパートの冷蔵庫にはビールが入ってはいないだろうな、と余計な心配をしてしまう。酔った彼女の相手はもうしたくない。
「先輩、もっとゆっくり行きましょう」
「もっと急いで欲しいんですか?わかりました」
「なっ?!ちょっと!先輩っ!」
葵は意地の悪い微笑みを浮かべている。
それにしてもとんでもない人に惚れてしまったようだ。
暖かい夕日の日差しを背中に受けながら、改めてそう実感した緋影であった。